【あらすじ】
プロローグ
桜咲朱音は落語家の父を持つ小学生。阿良川志ん太という高座名で細々と活動する父・徹を応援していたが、真打昇格試験にて一門のトップである阿良川一生の鶴の一声で破門を宣告されてしまう。心が折れ落語家を廃業した父の無念を晴らすべく、朱音は父の師匠である阿良川志ぐまに弟子入りを志願する。
見習い編
徹の破門から6年後、高校3年生になった朱音は卒業後の正式な弟子入りに向け、志ぐま一門の兄弟子である阿良川亨二と阿良川こぐまの指導を受ける。2人の教えで芸に磨きをかけた朱音は、一生が主催するアマチュア落語大会「可楽杯」に出場する。
前座修行編
高校卒業後、正式に志ぐま一門に入り阿良川あかねを名乗ることになった朱音は、弥栄亭での寄席修行をはじめ、出稽古など本格的な修行に入る。
【発売年】
2022年
【出版社】
集英社
【連載誌】
週刊少年ジャンプ
【巻数】
既刊9巻
【上位レビュー】
JKが父の意思を継いで、落語家を目指す話 落語の情景を伝える漫画の描写がうまく、初心者でもわかるようにキャラクターが会話してくれているので一気に読める ジャンプ王道の強いやつに出会ってドンドン成長していく主人公が描かれていて、とにかくアツい!基本的な漫画力が高く、絵はもちろんコマ割りや演出がうまく、そのうえ個性豊かなキャラクターが登場するので、ほぼ万人受けする内容だと思う 落語ってこんなに面白かったのか!という気分にさせてくれ素晴らしい漫画。
今、マンガの題材にならないものは無いと言っていいほど、様々なマンガがある。スポーツものは当然として、囲碁将棋、グルメ、経済、数学。もうなんでもあり。でも落語はその中でも特段に難しいのではないかと思う。落語の一席の時点でひとつの創作物であり、この噺が面白くなければマンガとしてなりたたない。そしてさらにそれを演じる落語家達が面白くないといけない。劇中劇と言うか、二重に物語を成り立たせないといけないのが難しい。もちろん、野球でもサッカーでも試合そのものが面白くないといけないのだけど、スポーツには勝ち負けというわかりやすい基準がある。グルメマンガに勝負がからむものが多いのはそれがわかりやすいからだろう。落語マンガと言いつつ、異能バトル的な展開のものもあるが、これは落語の魅力を伝えてるとは言い難い。落語の面白さを伝えることを放棄して、キャラクタの魅力だけに絞ってる。その点でこのあかね噺は落語と正面から向き合い、ちゃんと落語の面白さを伝えつつ、登場人物たちも個性があり力作だと思う。見ると作画・原作者の他本職の落語家もアドバイザーとしてついてるとか。独りじゃむりだよなーとほんとに思う。とても続きが気になるので頑張ってください。
【下位レビュー】
落語初心者の読者は楽しく読めると思います。ただ、多少なりとも落語を知っている者が読めば、この漫画が落語界の中でも特殊な「立川流」を基にして作られたものだという事にすぐに気づきます。立川流の世界を題材にした本は立川談春のエッセイ「赤めだか」が有名ですが、赤めだかを読んだ者ならこの漫画の多くのエピソードが赤めだかからインスピレーションされて作られている事にも気づきます。他に落語を題材にした漫画としては「落語心中」が有名ですが、こちらは本当に落語が好きで実際に寄席に足を運んで落語を楽しんでいる人にしか描けない作品です。それに比べると、この漫画には「赤めだか」で勉強した事以外に自分で感じ取った落語の面白さがまったく描かれていません。もともとそのつもりもない、落語は単なる背景で女子高生が主人公のスポ根的な漫画を目指しているのだろうと思います。そして掲載雑誌を考慮すると、それでいいのだとも思います。ただ、少なくとも落語好きの大人にはこの漫画はおすすめできません。
プロの世界を描くには仕方ないのでしょうが、落語の面白さや奥深さなどよりも「業界の厳しさ・苦しさ・理不尽さ」が先立ってしまい、読んでいる内に気分が重くなってしまいました。また主人公の朱音はいいとしても脇を固めるライバル・親友・協力者ポジションのキャラの魅力が薄く、物語に今ひとつ惹きつけられなかったのも難点です。そして何と言っても漫画ならではの「遊び心」や「余裕」がほとんど無く、ひたすらストイックに芸に向き合うので、徐々にその「固さ」で読者が離れていきそうに思います。