【あらすじ】
幼馴染の常盤貴臣と本仮屋碧。高校時代の17歳の夏、貴臣は碧に「工場夜景を見に行かないか」と提案する。だが、当日、貴臣がいた待ち合わせ場所に、碧は来なかった。碧が出かける直前、碧の家に刑事が訪れ、碧の父を準強制性交等罪の容疑で連行する。貴臣は帰宅後、叔父から、1か月半前に、母が酒に酔った隙に強姦されていたことを知らされる。その犯人は、碧の父親だった。事件の報道は瞬く間に高校内でも広まり、貴臣には被害者の息子、碧にも加害者の娘というレッテルが、社会人となった後も付きまとっていた。
【発売年】
2022年
【出版社】
講談社
【連載誌】
モーニング
【巻数】
全1巻
【上位レビュー】
わたしが著者の著作を読むのは、「パーフェクトワールド」以来2作目です。ある日を境に、主人公のふたりを取り巻く環境が大きくねじ曲がり、ふたりは「被害者家族」と「加害者家族」というレッテルを貼られ引き裂かれてしまうのです。被害者も、被害者家族も、加害者家族も誰も悪くなく、ただただ加害者本人だけがその罪を償うべきであるにもかかわらず、たった一度の犯罪が、こんなにたくさんの人の人生を歪めてしまう。でも、「こういうことって、よくあるのだろうな」と思ってしまった自分に、とてもショックでした。加害者の家族に対する社会的な支援はほとんどないのだと感じざるを得ません。アオが血の滲むような努力をした結果手に入れた平穏が無事続きますようにと、アオとタカオミが幸せになれますようにと、強く強く願うばかりです。
とてもリアリティのある漫画だった。登場人物のモブ達がリアルにこういう事を言いそうだなぁというのが特に現実味を帯びてた。主人公達がお互いに強くて良かった。それだけが救い。男の子の方が一貫して碧は悪くないからって思い続けられて良かった。ふつう、高校生くらいの男の子なら好奇の目に晒されたりしたら、少なからずあいつらが…とか思いそうなものだけど。でもそれが無かったからどん底にまで落ちることなく、なんとか持ち直せたと思う。碧が離れていくシーンは本当に辛くて涙が出た。再開出来て良かったけど、これから付き合っていく上で、結婚とかなったらどうしても母親に言わなきゃならないだろうとか、未来のことを考えたらどうするんだろうという疑問が残って、それでもこの2人なら何とか乗り越えて幸せになってくれるんじゃないかと希望を持ちたい。世の中にもきっとこういう境遇の人達はいるんだとおもうと本当に辛くなる、けど、本当に色々考えさせられる漫画なので沢山の人に読んで欲しい。そして、被害者へのセカンドレイプ、加害者家族への接し方を考えて欲しい。
タイトルに騙されないでください。加害者の娘と被害者の息子のそれは切ないラブストーリーです。過剰な表現はありません。真摯で一途な二人に襲い掛かる試練の連続に、ひたすら耐え続ける泣けるラブストーリーです。読んで損はありません、泣けます。
【下位レビュー】
加害者の娘と被害者の息子の純愛物語。とても純粋で真面目で考えさせる漫画で一巻で完結しているのも素晴らしい!中盤でのヒロインからのメッセージは涙が出そうで素晴らしいと思いました。でも個人的には残念でした。内容に触れるので詳しくレビュー出来ませんが以下ご参考までに。少し内容に触れるのでご注意ください。
①この犯罪の内容が微妙です。
勿論被害者にとってトラウマになる重大犯罪で許させる事ではありません。しかしこの犯罪までの経緯を考えると…被害者側にも油断があったのでは。最近の漫画は殺人や虐待など過激な犯罪行為が多いので読者として慣れてしまっているのが怖いですが、犯罪加害者と被害者家族が救済されずに社会的に追い詰められるほどの犯罪ではないと思います。また主人公はヒロインを守るためと言っても暴力を振るうので…残念です。
②夏休みに工場夜景を見れない理由。
夏休みは1ヶ月以上ありますよね。遠方まで旅行に行くわけでもないので、二人がお互いを大切に思っているのなら時間をつくれない展開が不自然です。
③工事夜景の描写
表紙のイラストは綺麗ですが、本編の工場夜景の描写が物足りないと思いました。